『フライング☆ラビッツ』:2008、日本
7歳の夏、早瀬ゆかりは東京で入院している母に会いに行くため、初めて飛行機に乗った。不安で一杯の彼女は、キャビンアテンダントに 優しい言葉を掛けてもらい、気持ちが落ち着いた。そして22歳の春、ゆかりは日本航空のキャビンアテンダントになった。彼女が寮に行く と、ジャージ姿のCA・水野樹たちが現れた。ゆかりは「新人、行くよ」と言われ、彼女たちに同行してバスに乗り込んだ。
バスは体育館に到着し、樹たちはバスケットボールの練習を開始した。ゆかりが困惑していると、新人の垣内千夏がパスを寄越すよう要求 した。バスケ未経験のゆかりが下手なパスを出すと、千夏は「バカにしてんの」と腹を立てた。千夏が掴み掛かると、ゆかりは父・玄海 から習った合気道で投げ飛ばした。その時、コーチの谷本美咲と部長の周一が走って来て、「彼女は選手じゃない」と言う。ゆかりと 同姓同名の新人選手がJALラビッツに入ったため、ゆかりは間違えられていたのだ。
ゆかりは新しい住まいが見つかるまでという条件で、選手寮に部屋を用意してもらった。千夏がルームメイトになった。ゆかりは千夏や 早瀬たちと共に、実習を受ける。上手く笑顔が作れない千夏は、教官の藤代敦子から注意される。しかし反抗的な千夏は、授業の後で 「笑えるわけないじゃん」と吐き捨てる。ゆかりは「ラビッツと同じクラスになれるなんて最高」と喜ぶ同僚・相原芽久美に誘われて、 合コンに赴いた。東京タワーへ行くと、若手議員の卵たちが待っていた。
選手たちは練習に行くため、ゆかりは寮で一人になった。彼女が体育館へ行こうとする途中、橋で男と遭遇する。ゆかりが体育館へ行くと 、その男が選手たちの練習を見ていた。ゆかりが声を掛けると、男はいきなりボールを投げ付けた。ゆかりが避けると、今度はドリブルで 突っ掛けて来た。ゆかりは身軽に男を避けた。その男は、監督の林だった。林はゆかりに、「ラビッツに入んないか」と持ち掛けた。 ゆかりは断るが、常務の福元から「会社命令だ」と入部を強制されてしまった。
ゆかりが練習に参加すると、美咲は「樹も大学まではハードル選手で、バスケ経験はゼロだった。それを監督がスカウトしたの」と語る。 かつて韓国ナショナルチームのヘッドコーチだった林を、花岡が招聘したのだという。休みの日、ゆかりはパンクバンドを組んでいる恋人 ・三木卓也のライブに出掛けた。早瀬と芽久美も同行し、ライブ後の飲み会にも参加した。その帰り道、ゆかりたちはIT社長と結婚した 元ラビッツの星名令子と遭遇した。彼女はダブル不倫中で、その写真がゴシップ誌に掲載された。
OGとの練習試合で、ラビッツは圧倒された。ゆかりは早瀬から、ラビッツが以前は優勝争いをする強豪だったが2年ほど前から弱体化 していることを教えられた。強かった頃のメンバーで残っているのは、樹、めぐみの2人だけだという。その夜、林は選手たちに、のぞみ が結婚することを報告した。のぞみは出来ちゃった結婚で、会社もチームも辞めることを語った。結婚相手は運送屋だった。
JOMOサンフラワーズとの練習試合で、林はスターティングメンバーの1人にゆかりを選んだ。全員が驚く中、千夏から選考理由を問われた 林は「勘だ」と答えた。ゆかりは昨シーズンの得点王に張り付くよう指示されるが、当然のことながら全く戦力にならず、チームの足を 引っ張ってしまう。ハーフタイム、林は「後半は作戦変更だ。ゆかりにボールを集めろ」と選手たちに指示した。ゆかりはボールを受ける と、見事なドリブルで敵を次々にかわした。
サンフラワーズの監督・香月雄二はタイムを取り、「秘密兵器だ、あいつに注意しろ」と選手たちに指示した。ゆかりはシュート出来る ポジションに立ったところで動きが止まり、ボールを奪われてしまう。試合に大敗し、ゆかりは号泣した。彼女は退部しようと考えるが、 ホームページの写真撮影に参加させられて、言い出すタイミングを失った。ゆかりは頭を剃って寺の坊主になった卓也を訪ねた。彼の実家 も寺だった。ゆかりは千夏に「シュートを教えて」と頼む。ゆかりが試してみると、一発でシュートは入った。
花岡は林の意向を受け、ゆかり、千夏、早瀬の3人をOJTに出すよう藤代に申し入れた。ゆかりの実習の成績が悪いので、藤代は大反対 するが、仕方なく承諾した。飛行機が離陸した後、少女が「ハムスターがいなくなった」と千夏に泣き付いた。ハムスターの持ち込みは 禁じられているため、ゆかりたちは藤代に内緒で捜索した。空港に到着して乗客が降りた後、ゆかりはハムスターを発見し、少女に返した 。ゆかりは藤代に見つかって叱責されるが、満足感を抱いていた。
ゆかりは勤務と並行し、千夏、早瀬と共にトレーニングを積む。実習が終わり、訓練生は全員が合格と発表された。居眠りしていたゆかり は藤代から「CAとラビッツ、どちらかにした方がいいんじゃないですか」と嫌味っぽく言われ、「私はどっちも選びます」と答えた。 Wリーグが開幕し、ラビッツはデイジーブライツと最初の試合を迎えた。林は新人の3名を先発で起用する。試合序盤は活躍したゆかり だが、シュートが打てる態勢でも全く打たなかったため、途中で交代させられた。
試合会場を出たバスの前に、玄海が立ちはだかった。ゆかりが慌ててバスを降りると、試合を見ていた玄海は「お前の動きは濁っとる。 叩き直してやる」と言う。彼はゆかりを道場へ連れて行き、合気道の稽古をさせて「大切なのは合気の心」と説いた。一方、令子は離婚し 、サンフラワーズで選手復帰した。ゆかりは千夏から、「試合でダンクをやってみたい。女子でダンクを決めた選手はいない」と聞き、 自分たちで歴史を変えようと持ち掛けた。
卓也に電話を掛けたゆかりは、彼が黙って福岡に帰郷していることを知った。仕事で福岡空港に到着した彼女は、勝手に抜け出して卓也の 実家へ出向いた。卓也は帰郷した理由について、「父親の具合が悪く、命に別状は無いが後遺症が残った」と語る。ゆかりが「ちょっと ぐらい相談してくれたっていいのに」と抗議すると、彼は「お前は俺よりスチュワーデスの仕事を取るだろ。バスケを取るだろ。もう ラーメンとチャーハンを両方食べちゃってるわけだから、無理だよ」と言う。ゆかりは「無理じゃない。だって拓哉は別腹だから」と声を 荒げ、涙を流して走り去った。
会社に戻ったゆかりは、福元から服務規程違反のペナルティーを科すことを告げられた。ゆかりは林から、試合に出場させないことを 通告された。謹慎処分となったゆかりは、樹が今度の試合で引退すると知る。もう膝が限界なのだという。ゆかりが樹の元へ行くと、彼女 は「随分前から引退のことを考えてた。正直、自分がピークを過ぎてることも分かってるし、いい潮時かなって」と語った。
ゆかりは納得できず、樹に「良く分かんないです。好きなんですよね、バスケ。バスケが好きならやればいいじゃないですか。好きなのに 辞めちゃうなんて、分からないんです。だって、ラーメンもチャーハンも食べたかったら、どっちも食べればいいじゃないですか。なのに 腹八分目の方じゃないとみたいなカッコイイこと言っちゃって。私なら絶対に嫌です。出来ないですよ、そんなこと」と責めた。そして サンフラワーズとの試合が訪れ、樹は膝の痛みを押して出場する。一方、ゆかりは飛行機清掃のペナルティーを受けていた…。監督は瀬々敬久、原作は深田祐介、脚本は山名宏和、製作は島本雄二&橋荘一郎&松崎澄夫&坂上順&福原英行&八木昭二&神野智、 エグゼクティブプロデューサーは白石統一郎&葉梨忠男&遠藤茂行、企画・プロデュースは蔵本憲昭、プロデューサーは下田淳行、ライン プロデューサーは及川義幸、アソシエイトプロデューサーは盛夏子&仁科昌平、プロデューサー補は原公男&花田聖、撮影は斉藤幸一、 照明は豊見山明長、美術は丸尾知行、録音は井家眞紀夫、編集は大永昌弘、VFXスーパーバイザーは立石勝、バスケットボール指導は 加藤貴子、実況アナウンスは山崎あみ、音楽は安川午朗。
主題歌はポルノグラフィティ『ギフト』作詞:新藤晴一、作曲:岡野昭仁、編曲:ak.homma & Porno Graffitti。
出演は石原さとみ、真木よう子、渡辺有菜、滝沢沙織、柄本佑、酒井彩名、高田純次、大杉漣、白石美帆、吉瀬美智子、光石研、堀内敬 子、久ヶ沢徹、哀川翔、木村祐一、八木亜希子、鹿谷弥生、一戸奈美、ジュワ、黛英里佳、竹田理恵、千雅、坂口真紀、石山喜理、 小林きな子、飯島大介、石垣光代、石田剛太、諏訪雅、本多力、竹嶋康成、あじゃ、矢俊博柴、森下能幸、望月理恵、加藤貴子、紺野麻里 、矢代直美、柳本聡子、堀部涼子、岩村裕美、畑岸邦枝ら。
女子バスケットボールチームのJALラビッツをモデルにした深田祐介の小説『翔べ!ラビッツ 新世紀スチュワーデス物語』(文春文庫版 では『フライング・ラビッツ 新世紀スチュワーデス物語』に改題)を基にした作品。
監督は『MOON CHILD』『サンクチュアリ』の瀬々敬久。
放送作家の山名宏和が、映画初脚本を手掛けている。
ゆかりを石原さとみ、千夏を真木よう子、早瀬を渡辺有菜、樹を滝沢沙織、卓也を柄本佑、芽久美を酒井彩名、林を高田純次、福元を 大杉漣、美咲を白石美帆、令子を吉瀬美智子、花岡を光石研、藤代を堀内敬子、香月を久ヶ沢徹、玄海を哀川翔が演じている。冒頭、ゆかりが飛行機に乗った7歳の出来事が描かれる。雲が晴れて虹を見た後、「結局、母は入院先のベッドで亡くなった。でも私は、 あの虹のことを思うと、いつも希望が湧いた」というモノローグが入る。
でも、それでホントにいいのか。
そこは母が死んだら、展開としてダメだろ。そこで母親を死なせてしまう意味も全く無いし。
っていうか、初めて飛行機に乗る理由が「母の見舞い」である必要性も無いし。
どうして、そんな無駄に引っ掛かるような設定にしちゃったのか。ゆかりは早瀬と間違えられてラビッツのバスに乗るのだが、すげえ無理を感じるぞ。
まず選手たちは、ゆかりの背が低いことに違和感を覚えなかったのか。幾ら初対面の新人とは言え、早瀬の簡単な情報ぐらい知っている はず。本物の早瀬とは全く身長が違うじゃねえか。
ゆかりってバスケ選手としてはかなり小さいのに、そこに誰も引っ掛からないのは不自然だ。
それに、ゆかりはスーツとスカートなのに、それでバスに乗せて行くのも不自然。「お前、そんな恰好で練習に行くつもりなのか」とか 、誰か指摘しそうなものだぞ。
ラビッツって、そんなことに気付かないぐらいボンクラの集まりなのか。バスの中で、ラビッツの連中が全く喋らないのも不自然。新人に対して、そんなに冷たいのか。
とにかく、ゆかりが早瀬と間違えられるポイントが、「たまたま練習に出掛けるタイミングで寮に来たから」というだけってのは、あまり にも作りがテキトーすぎる。
それに、選手たちは「お前が早瀬ゆかりか?」と、名前を確認することも無いし。
そこは同姓同名ってのが重要なはずなのに、「新人」としか呼ばれていない。
それは手落ちでしょ。ゆかりは下手なパスを出して千夏に掴み掛かられ、合気道で投げる。
だけど、ゆかりが千夏を投げたことに対する驚きは全く表現されずにスルーして、すぐに「ゆかりは人間違いだった」という展開に移る のよね。
だったら、そこで合気道を披露した意味が無くなっちゃうでしょうに。
ゆかりが林と遭遇するシーンがあるけど、そこで初めて合気道の技を披露する形にすりゃいいんじゃないのか。っていうか、その橋のシーン、「ゆかりが向こうから来た林を避けようとすると、向こうも同じ方に避ける。そこで、ゆかりは素早い動き で林を避けて通過」という動きを見せて、林が「なかなかやるな」と感心するんだけど、それが「林がゆかりのセンスに気付く」シーン ってことは、すげえ分かりにくいぞ。
その後、体育館で林が投げたボールがドリブルをゆかりは避けるけど、それも表現として違うでしょ。
バスケの才能を考えると、むしろ避けずにボールはキャッチすべきだし、ドリブルは止めるべきでしょうに。
「ゆかりのバスケの才能に監督が見抜く」というトコの描写が、とにかくメチャクチャだ。
っていうか、そもそも、なんで合気道なのか。もうちょっとバスケに応用できそうなスポーツにしておけよ。林はラビッツの監督だった林永甫がモデルだから韓国人の設定なんだけど、物語としては、その設定の意味が全く無い。
林は流暢な日本語で喋っており、カタコトの日本語とか、チャンポンの怪しいハングルを喋るわけでもない。
それに、彼が韓国人であることが、物語に何の影響も与えない。
あと、そのキャラ設定で、しかも高田純次にやらせているのに、妙に落ち着いているんだよな。
一応、トボけたことも言うんだけど、もっと弾けたコメディー・キャラにしておくべきじゃないのか。芽久美が「合コン」って言ってるのに、ゆかりが連れて行かれたのは東京タワー。その中で、ゆかりたちは3対3で自己紹介している。 そのシーン、すげえ不自然だなあと思っていたら、どうやら東京タワーのプロダクト・プレイスメントなのね。
しかも、そこから何か展開があるのかと思ったら、合コン相手の連中が「我々は日本の未来を明るく変えます」と言って、東京タワーが ライトアップされてシーンが終わる。
それってオチのつもりか。オチてないぞ。
っていうか、そんなチョイ役のキャラで、コントをやってどうすんだよ。
オチを作るなら、メイン側の奴らを使って作らなきゃダメでしょ。ゆかりは寮で一人だからってバスケの練習を見学に行くのだが、それは理解不能。
念願のスッチーになれたんでしょ。だったら暇な時間を利用して、スッチーの勉強をしろよ。なんでノンビリとお菓子食べながら散歩 してるんだよ。
こいつ、スッチーに対する意欲、やる気が全く見られないのよ。
これが例えば「軽い気持ちでスッチーになった」とか、「なりたくないけど成り行きでスッチーになった」とかいう設定なら別にいいかも しれんが、子供の頃からの夢だったんだろうに。ゆかりの初練習は、何もしないまま終わっている。
で、次の救助訓練シーンでは、もう「練習で足が張っている」という描写がある。
いやいや、その省略はダメだろ。
そこは「初練習で予想以上にキツい基本の体力作りをさせられて、ヘロヘロぶりに部員たちは呆れる」とか、そういう描写をすべき でしょうに。
林に関する説明をしただけで練習初参加シーンを終わらせるとか、アホすぎるぞ。ゆかりが先発で起用されるまでに、彼女が練習しているシーンが一度も無いって、すげえ構成だよな。だから、どのぐらいの実力なのかも サッパリ分からない。
そこは「バスケ未経験だから試合に出すレベルじゃない」という印象じゃなくて、実際に練習シーンを見せて、彼女の技術が低いことを 示しておくべきでしょうに。
で、練習シーンの中で、「ゆかりは下手だけど、林は彼女の隠された才能に気付く」という形にすればいいのよ。
初めての試合で、ゆかりはボールを受け取ると見事なドリブル突破を披露するけど、少なくとも片鱗ぐらいは、練習の中で見せておく べきなのよ。この映画だと、監督がゆかりの何に期待しているのか、どこに才能を感じているのか、サッパリ分からないんだよ。 それこそ「勘」だけなんだよな。そして、その勘が全く当たっているように思えない。
監督が「勘だ」と言うのは、別に構わないよ。
ただし、観客に対しては、その起用に何となく納得できるようなモノを提示することが必要だ。
ホントに何の裏付けも無い、ただの勘だけでは困るのだ。っていうか、ゆかりが最初の試合で見事なドリブルを見せるのって、無理がありすぎるぞ。
「センスを感じたから林が特訓を積ませて、その結果としてドリブルが出来るようになった」という手順を踏むべきでしょうに。
未経験のド素人が、それは無いわ。
合気道をやっていても、ドリブルの技術には応用できないでしょうに。
人混みに当たらずに通り抜ける練習をやらされた少女時代のシーンがあるけど、それって合気道じゃねえし。
なんかバスケと合気道、2つのスポーツをバカにしてるよな、この映画。ゆかりのCAとしての様子と、ラビッツでの様子、それを両立させようとして、さらに私生活も描いて、完全に処理能力をオーバーして しまっている。
その結果、CAの話もバスケの話も、どっちもペラペラの仕上がりになっている。
CAとしての訓練も、ほとんど描写されていない。そこでヒロインが成長していく、一人前になっていく、壁にぶちあたる、それを乗り 越えるといったドラマは、全く描かれない。
ただし、118分の尺で2つを両立させることが、絶対に不可能な作業だとは思わない。無駄な部分を削ぎ落とし、もっとテンポ良く描けば 消化できたはず。
寮母が元ラビッツだったという設定も、全く活用されないんだから、ただの無駄。恋愛劇も全く消化できていない。
どうしても恋愛劇を盛り込みたければ、職場恋愛にすれば良かったんじゃないの。
いきなり卓也が坊主になっているのも、ギャグとしては成立しておらず、ただ単に粗くて幾つかシーンを飛ばしているように感じるだけ。
っていうか、たぶん「パンクロッカーが坊主の息子」ってトコでギャグにしているつもりなんだろうなあ。
で、坊主になった卓也にゆかりは会いに行くが、それも意味が薄い。「今度、『アンパンマン』歌って」という台詞も、すげえ唐突だし。
その後、ゆかりが少女時代に祭りで卓也が『アンパンマン』の主題歌を歌っていたのを見たという回想シーンが挿入されるが、それは先に 見せておくべきでしょ。ゆかりは初めての試合でシュートを打てるのに打とうとせずにボールを奪われ、それを見ていた美咲が林に「シュート教えてないでしょ」 と言うけど、シュートどころか何も教えてねえよ。
っていうか、教えてもらわなきゃシュートが打てないわけでもないし。下手なシュートは打てるはずでしょ。最初に体育館へ行ったシーン で、下手なパスは投げたんだし。
その試合の後、ゆかりは千夏に「教えて、シュート」と頼むけど、それも変だぞ。全体練習の時に、林が教えてくれるはずだ。
先発起用するぐらいなんだから、シュートが出来なくてもOKとは考えていないだろうし。で、千夏に教わると、ゆかりは簡単にシュートを決める。なんだ、そりゃ。
教わってすぐに簡単に入るぐらいなら、試合でも素人としてのシュートぐらいは打てたはずだっつーの。
教わってないから打てないとか、メチャクチャだよ。しかも、それも「合気道のおかげかな。心で思い描くと形になるの」と合気道に 結び付けるし。
で、そこでは打てたのに、試合になると打てない。
だったら、「試合でシュートが打てなかったので教わる」という手順は無駄になるでしょ。
「最初にやり方は教わったけど、試合になると打てなかった」という手順にしておくべきじゃないのか。っていうか、なんでシュートを打てないのか、サッパリ分からない。
「シュートするのが怖い」ということらしいが、「シュートが怖い」って、なんだ、そりゃ。
過去に何かトラウマがあるなら、まだ分かるよ。だけど、そういうわけでもないんだし。
で、それに関してゆかりは、そんなに悩んでいる様子も無い。途中交代させられた直後の、千夏と早瀬との練習シーンでは、すげえ呑気に 「ダンクをやろう」とか言ってる。「女子バスケの歴史を書き換える」とかヘラヘラしてる。
アホかと。ゆかりは樹がバスケを辞めると聞いた時、「好きなんですよね、バスケ。好きなのに辞めちゃうなんて、分からないんです。ラーメンも チャーハンも食べたかったら、どっちも食べればいいじゃないですかなどと言うのだが、ワケが分からない。
別に樹は、「結婚するためにバスケを辞める」とか、「仕事を優先してバスケを辞める」とか、二択でバスケを辞めると決めたわけ ではない。
膝が限界だから引退を決めたのだ。
バスケが好きでも、体が限界なら辞めざるを得ないでしょうに。
ゆかりの言ってることはメチャクチャだ。ゆかりは恋人に会うために勤務を投げ出すが、それは越えてはいけない一線を越えちゃってるだろ。完全にCAとして失格だぞ。
せめてコメディーとして描いてくれるなら何とかなったかもしれないが、マジに「失恋でショック」というシーンとして見せちゃうん だよな。
その後、彼女は謹慎中なのに試合会場に来るというルール違反もやらかしている。
樹が引退すると聞いた時、バスケもCAも両立したい気持ちを強く主張していたはずだろ。
なのに、そんなCAをクビになるような行動を取っている。メチャクチャだ。サンフラワーズとの試合に途中出場したゆかりは、千夏に合図を送ってダンクシュートをやらせている。
そこに向けての伏線はあったけど、そこでダンクはダメだよ。反則なんだし。
千夏は反則だと知りながら「とにかくダンクを決めたかったのよ」と笑うけど、そんな遊びを入れてもいいような試合じゃないだろ。
樹なんて膝の痛みを押して強行出場しているのに、お前らが遊んでるんじゃねえよ。
あと、素人のゆかりはともかく、他の選手やコーチも大喜びしているけど、反則ってことを知らないのか。マジで勝ちを目指さなきゃいけない試合で、反則のダンクをやるという展開は、ものすごく愚かしい。
結果的には2点差の惜敗なんだけど、「その余計なダンクをやらなきゃ勝てていたんじゃねえのか」と思ってしまう。
しかも、その試合のラストは、ゆかりが早瀬から、今までやったことの無い3ポイントシュートを促され、挑戦して失敗する。
なんだよ、その展開は。
そこは、「それまで練習や練習試合で挑んだけど失敗していたシュート」とか、「密かに練習していたシュート」とか、何か伏線のある シュートにしておくべきでしょ。ダンクよりも、そっちで伏線を張っておけよ。
あと、そこは失敗じゃなくて、普通にブザービーターで良かったんじゃねえの。(観賞日:2012年3月11日)
第5回(2008年度)蛇いちご賞
・女優賞:石原さとみ